「失敗は成功の素」―失敗というネガティブな事象に、じつは創造力が内在しているというこの言葉はあまりにも有名だ。この創造力を大いに“発揮”して商品を開発した興味深い話がある。
3Mが開発した付箋紙「ポストイット」。いまやオフィスの必需品となった同商品も、元はといえば失敗から生まれた商品だ。これも有名な話なのでご存知の方も多いかと思う。
「よくつくが、すぐ剥がれる」が失敗作だった
1960年代の終わり、3Mの研究者スペンサー・シルバーは、より接着力の強い接着剤の開発に取り組んでいた。実験を繰り返すうちにできあがった試作品は、期待とはまったく違うものだった。「よくつくけれど、簡単に剥がれてしまう」。接着剤としては明らかに失敗作である。
通常こうした失敗作は捨てられてしまう。だがシルバーはそうしなかった。何かに使えるはずだと信じ、社内の講演やセミナーでこの接着剤を紹介し続けたのである。とはいえ、具体的な用途は誰にも思い浮かばなかった。
数年後、その話を知っていた同僚のアート・フライが、思わぬところで用途に気づく。聖歌隊で歌うとき、賛美歌集に挟んだしおりが落ちて困っていたのだ。よくつくが、簡単に剥がれる。しおりに求められるのは、まさにそれだった。
フライは開発に取り組み、ついにメモ型のポストイットとして商品化にこぎつける。それでも売れるまでには時間がかかった。営業も苦労したが、大企業の役員秘書たちの間で人気が高まり、ついには全米での発売にいたる。最初の「失敗作」が生まれてから、10年以上の月日が経った1980年のことだった。
苦手意識、あきらめの先入観、手つかずの逃げ心―。往々にして初めてのことに取り組む場合、誰にでもこのような“弱い心”がでてくる。しかし失敗を恐れず、失敗をも糧とし、新たに挑戦した時、はじめて大きな視界が開けてくる。仕事においても、生活においても、勝利へのカギはすべて自身の心の内にあると肝に銘じたい。
15%ルールとブートレッギング
とともに、それを支える環境も大切となるだろう。ふたりの研究者を支えていたのが、在籍していた社の制度だった。その会社には執務時間の15%を自分の好きな研究に使ってもよいとする「15%ルール」、たとえ上司の命令に背くことになっても、自分の信じる研究をするために会社の設備を使ってもよいという「ブートレッギング(密造酒づくり)」という不文律があった。
フライはこのルールを最大限に活用し、ポストイットの開発に邁進したというわけである。失敗という創造力を発揮するためには、創造性を醸成し、活かすだけの組織風土が必要となる。しかもそこにはただの制度づくりだけではなく、上にたつものの人間性が問われてくることになるのだ。
朝礼スピーチ例文(そのまま読めます)
オフィスにある付箋、ポストイットは、失敗から生まれた商品です。
1960年代の終わり、3Mというアメリカの会社で、ある研究者が強力な接着剤を開発するよう指示を受けました。できあがったのは、よくつくけれど簡単に剥がれてしまう接着剤。目的から見れば失敗作です。
普通なら捨てられます。ところがこの接着剤は捨てられませんでした。数年後、別の研究者が、本から落ちるしおりに困っていたときに、この接着剤を思い出します。よくついて、簡単に剥がれる。しおりには、まさにそれが必要でした。
そこから商品化までさらに時間がかかり、全米で発売されたのは1980年。最初の失敗作が生まれてから、十年以上が経っていました。
この話で大事だと思うのは、失敗を捨てなかった人が一人ではなかったことです。作った人が残し、別の人が思い出した。両方が必要でした。
うまくいかなかったものを、すぐに捨てていないか。誰かの失敗を、覚えておく余裕があるか。今日、そこを少し意識してみてください。
