迷っている相手の背中を、どう押すか。不安を打ち消そうとするのか、それとも不安の先にあるものを見せるのか。英語教材の営業で世界No.2の成績を挙げた和田裕美さんのやり方は、後者だった。
「超前向き人間」が世界No.2セールスウーマンに
仕事での成功者として著書もベストセラーの和田裕美さん。英語学習プログラムを販売する会社で世界No.2のセールスウーマンになった彼女は「超前向き人間」。いつも「自分の未来には楽しい事が起こる」と信じ、ワクワクしているのだとか。
英会話スクールの入会を迷っているお客さんというのは、英会話をマスターしたいと思いながらも、「大金をはたいて入会して、本当に話せるようになるのだろうか?」などと不安に思っている人が大半。そんな人に和田さんは明るく前向きな気持ちで接し、英語を話して活躍しているお客さんの未来の姿を一緒にイメージしてワクワクするのだそうだ。
夢を実現させているお客さんの姿を伝えることで、ワクワクした前向きな気持ちを「伝染」させる。お客さんは未来の自分の姿をイメージしてワクワクすることで不安を解消し、入会を決めるのだそうだ。和田さんは、「英会話にトライしてみたいけど不安だ」と後ろ向きになっているお客さんを、前向きにして背中を押してあげることで次々と契約をとっていった。
おもしろいことに、和田さんが伝染させた「ワクワクした前向きな気持ち」というのはお客さんひとりにとどまらず、さらに伝染していく。スクールに入会したお客さんが英会話に興味のある友人を連れてきてくれたこと、入会を一度は断ったお客さんが、和田さんのことを覚えていて1年後にお金や時間の都合をつけて入会したことがあった。こうして彼女は「前向きな気持ち」で世界No.2セールスウーマンとなった。
一度断った客が、一年後に戻ってきた
和田さんの手法で注目したいのは、お客さんの不安を否定していない点である。
「大金をはたいて、本当に話せるようになるのか」という迷いに対して、大丈夫です、できますよ、と請け合ったわけではない。すでに英語を使って活躍している受講生の姿を具体的に伝え、その先にある未来を一緒に描いた。不安はそのままに、視線の向きだけを変えたのである。
迷っている相手に対して、私たちはつい不安を打ち消しにいく。心配ない、問題ない、と。しかし不安は打ち消されるほど強くなることがある。否定されれば、相手は自分の懸念が理解されていないと感じるからだ。
一方、その先にある姿を具体的に示されると、人は自分でその像を思い描きはじめる。判断の材料が「不安かどうか」から「そうなりたいかどうか」に移る。決めるのは相手自身であり、押し売りにならない。
そしてこの手法には、時間差で効いてくるという特徴もある。一度断った客が一年後に戻ってきた。入会した客が友人を連れてきた。その場で契約に至らなくても、相手のなかに描かれた未来の像は消えずに残る。目の前の一件を追うのではなく、相手のなかに何を残すか。営業の成果が積み上がるかどうかは、そこで決まるのだろう。
迷っている相手に、何を見せているか。今日の商談を、そこから振り返ってみたい。
【参考】
和田裕美『世界No.2セールスウーマンの「売れる営業」に変わる本』(ダイヤモンド社)
朝礼スピーチ例文(そのまま読めます)
英会話教材の営業で、世界2位の成績を挙げた和田裕美さんという方がいます。
英会話スクールに来るお客さんは、たいてい迷っています。習いたい気持ちはあるけれど、大金を払って本当に話せるようになるのか、と不安を抱えている。
和田さんがやっていたのは、その不安を打ち消すことではありませんでした。すでに英語を話して活躍している受講生の姿を具体的に伝えて、お客さん自身の未来の姿を一緒に思い描く。不安を消すのではなく、その先を見せたわけです。お客さんが考えることが、「不安かどうか」から「そうなりたいかどうか」に変わります。
面白いのは、その後です。入会したお客さんが、英会話に興味のある友人を連れてきた。一度は断ったお客さんが、和田さんのことを覚えていて、一年後にお金と時間の都合をつけて入会した。
売り込んだ相手が、一人ではなくなっていた、ということだと思います。
私たちの仕事にも、相手が迷っている場面があります。そのとき、迷いを打ち消しにいくのか、その先にあるものを見せるのか。
今日、誰かの迷いに向き合う場面があったら、後者を試してみてください。
